世界大会ってこんな感じです!のコーナー (2011/08/03 城戸慎也)

【日本から現地に到着するまで 編】

 

1.始まる前からワクワクとバクバクが止まらない

どんなヨーヨーを持っていくかだけでワクワクしたり。

実は世界大会から生まれたビデオというのは、多くの人にとってヨーヨーにのめり込むきっかけとなることが多いのです。そうでなくとも、記憶に強い印象を残すビデオが多く生まれます。広い会場とざわめきの音、見たことのないトリックの連続。ヨーヨーとは思えないスケールの大きさを想像させる、世界最大級の大会。その舞台を生で見られるとなると、ワクワクが止まらないのも無理ありません。

また、多くのメーカーにとっては、この世界大会が勝負どころでもあります。各社揃って新機種を出したり、イベントを行ったり、本当にお祭り騒ぎのような日々となります。ヨーヨーの世界にとって、1年の節目はこの世界大会といっても過言ではありません。

基本的に世界大会自体は3日間の開催ですが、その前後は、1年の中でもヨーヨーにもっとも熱中する期間となることでしょう。また、目の前で新たに世界チャンピオンが生まれる瞬間というのは、本当に特別で、素敵なものです。

しかし優勝を狙うプレイヤーの人たちは、ただワクワクしているだけというワケには行きません。世界チャンピオンになるための努力が水の泡と消えるか、見事成就するか。それがフリースタイルの「たった3分間」で決まります。さらに、無事に現地に辿り着けるか、予選は通過できるのか、ストリングやパーツなどを忘れていないか、ヨーヨーは十分な数を用意できたか、などなど……。ほとんどの選手は、日本以外で戦うアウェーの大会ですので、普段より多く不安が生まれてしまうのも当然というもの。日本にいる内から心臓がバクバクと鳴り出してしまう方も少なくありません。

プレイヤーとしてだけでなく、今後の人生も左右しかねない大会……それが世界大会。観戦に行く人、参加する人、優勝を狙う人。思いは人それぞれですが、共通して言えることは「ヨーヨーが好きなら行ったほうがいい」です。行く大変さに見合った、むしろその何倍もの楽しさが待っています!

2.準備は人それぞれ

しっかりスケジュールと持ち物を確認しましょう。

世界大会の会場は、フロリダ州オーランド、ローゼンプラザというホテルの中にあるホールで開催されます。観光地としても有名なこの都市、そのホテルの周りにはユニバーサルスタジオ、ディズニーランド、シーワールド(水のアトラクション)などがあり、大会の前後には、観光として訪れる方も多くいます。買い物を楽しめるモールも多く、ちょっと離れたところにはケネディ宇宙センターなどもあり、旅行が好きな方ならば、前後2~3日ほど余裕を持って飛行機を予約するのがオススメです。きっと、スケジュールはすぐに埋まってしまうことでしょう。

出場するプレイヤーの人たちは、世界大会前から大会が終わるまでは、ホテル内に缶詰めで練習する人が多いので、普段より多めに消耗品(つまりストリングやパッドなどのパーツ類)を持っていきます。また、現地でのトラブルを極力抑えるために、フリースタイル用に提出する音楽CDは複数枚用意したり、エントリーシートの予備を印刷したり、練習用の着替えを用意したりと、直前は慌ただしい日々となります。

……余談ですが、この時もし直前で残り少ないパーツがあったとしても、メジャーなもの(ノンブランドのストリングなど)であれば現地調達が可能ですので、あまり焦る必要はありませんが、それでも出発前には、十分数を用意しておきたいですね。

一部の選手は、時差などの環境の変化にしっかり慣れたり、モチベーション向上のために、通常よりもっと早めに現地入りをするケースもあります。スケジュールに余裕のない場合は、飛行機で寝る時間を調整したりと、ステージで全力を出すために、プレイヤーの方々は他のスポーツの選手と同じように、さまざまな工夫を凝らします。食の変化に対応するべく、近年は日本食を持っていくプレイヤーも多く、慣れ親しんだ食べ物で体調をコントロールするという手段もよくとられます(ホテル内に電子レンジは用意されているので、パックの白いご飯やレトルトのカレーも調理できるのです)。

日本からは他にも、JYYF(日本ヨーヨー連盟)に所属するジャッジが、世界大会のオフィシャルジャッジとして参加します。そういった人たちは、世界大会のルールなどの資料を読んだり、ミーティングの用意をしたり、貴重な各国のジャッジとの交流の機会を最大限に活かすために準備をします。この大会以外で各国のジャッジが集合する機会は、EYYC(ヨーロッパ大会)か、AP(アジア大会)くらいのもので、その度に各国のヨーヨーの情勢などの情報交換が行われます。これはプレイヤー同士でも同様で、自分の国で最近流行っているトリックやヨーヨー、話題のプレイヤーの紹介など、英語が共通言語となって、さかんに交流が行われます。

実際に英語力はそこまで問題ありませんが(中学生の学習範囲くらいで大丈夫と言われています)、英語が不安な方や、こういった交流をより楽しみたい方は、電子辞書や英語の会話参考書などを準備し、読んでおくとラクです。

また、ローゼンプラザホテルへの住所は、携帯の中やメモ帳に書いておくか、印刷して、必ず準備するのがセオリーです。タクシーに乗る時などに必要なので、手持ちのカバンやサイフの中に入れておくと便利なのです。

3.飛行機と空港ではどう過ごそうか

移動時間は練習タイムかしら、それともリラックスタイムかしら。

アメリカは日本とは比べ物にならないくらい広い国です。なので、一概に「日本からアメリカまで」といっても、西のはしっこと東のはしっこでは、飛行機だと3時間から4時間の移動時間差があります。フロリダは日本から一番遠い位置にある都市なので、空の上に大体16時間居ることになります。実に半日以上。日本ではほとんど体験することのない移動時間です。

なので、その飛行機の長い時間をどう過ごすか。どういった目的で行く場合であれ、ほとんどの人は、毎年これに悩まされます。一般的にはもちろん普通の旅行と同じで、携帯ゲーム機、音楽、読書、ドラマ・アニメ・映画鑑賞、そして睡眠ですね。実際のところ、同行者と話が盛り上がったりしていればすんなり到着したりもします。加えて、このような長時間のフライトとなる国際便は、座席に用意されたディスプレイで映画を見れたり、意外と退屈はしません。

これは本番を控えた出場選手らでも同様で、現地外でリラックスが可能な最後の時間となる飛行機の中では、読書やゲームで過ごす方が多いようです。もちろん、iPodやウォークマンのような携帯プレイヤーなどで自分のフリースタイルを確認したり、音楽を聞きながら本番のイメージトレーニングをしたりする方も居ますが、16時間座りっぱなしでそのままずっとというのは無茶ですので、結局は気が済むまで好きなことをしてリラックスを図るというのが一番なのかもしれません。

また、日本からフロリダの空港までの直行便はないので、10~13時間ほどのフライトのあと、アメリカ国内で国内線に一度乗り継ぐことになります(サンフランシスコかロサンゼルスで乗り継ぐケースが多いようです)。広い空港内はショップなどが充実していますので、その探索も楽しみの1つです。買い物好きな方は、ここでお金を使い込んだりして、現地での滞在費用がなくならないように細心の注意が必要です。

【世界大会への質問コーナー】

リワインドのツイッター公式アカウントにて募集している、世界大会に関する質問をお答えするコーナーです。世界大会期間中(8月2日~10日あたりまで)は随時受け付けておりますので、どしどしご連絡ください!ダイレクトメッセージ、ツイートへのリプライ(返信)、どちらでも構いません。
それでは本日お答えする質問はおひとつ。こちらです!

Q.―選手の使用しているヨーヨーのメーカー率とか、自国産メーカーのヨーヨーを使用している率とかが気になります。
.正確な使用率はわかりませんが、やはり自国のメーカーのヨーヨーを使用するというプレイヤーが一番多いです。
自国にメーカーが無い場合、やはり順当に、世界的に有名なメーカーたちが多く使用される傾向にあります。
2010年の世界大会の1A部門決勝については、資料がございますので、参考にしてください。
……とくに変哲もない返信となってしまいまして、申し訳ありません。

【無事に現地に到着 編】

 

1.まだ会場じゃないのにテンションが上がる

その1でお伝えしたとおり、フロリダの空港へは一度、アメリカ国内で国内線に乗り換える必要があります。飛行機の便は都会の電車のように2分刻みであるわけでは無く、ルートも多くはないので、行く途中にヨーヨープレイヤーとすれ違ったり、合流したりすることがよくあります。

日本で見かけたり、ビデオだけで見たことのある選手や人々が居ると、いよいよかと気分も高揚してきます。そしていざフロリダの空港(ほとんどはオーランド国際空港着)に到着すると、さらに遭遇率アップ。日本じゃないのに日本みたい。そんな状況も珍しくありません。16時間のフライトを終えて、フロリダにたどり着いたということもあって、人によってはテンションが上がり、人によっては心臓がバクバクしだしたり、人によっては緊張で足が震えだしたりします。
海外自体が初めての場合、腕時計と空港の時計が全然違ったり(時差はできるだけすぐ直しましょう)、携帯電話が『時差を修正しました』とか見たことのないアラートを出していたり、そんな些細なことでもテンションが上がるというものです。加えてヨーヨーが好きな人がごろごろ居る場所へこれから向かうというのですから、ヨーヨーが好きな方なら楽しみでないワケがありません。
空港から会場のローゼンプラザホテルまでは、タクシーで移動します。事前に用意していた住所を教えて、荷物をトランクに入れて、乗り込んで。そのタクシーの窓から見える木々や建物、風景を眺めていると、最初はホテルなんか全然見当たらないので、「ここで本当に世界大会をやってるのかな」と思えてきます。

しかし15分~20分後、びっくりするほど見覚えのあるホテルが目の前に現れます。「またこの季節がやってきた」「うわーここかー!」「すっかり常連になったなぁ」「足震えてきた」人によって反応はさまざまでしょうが、どのタクシーの中も、ガヤガヤしていること間違い無しです。

 

 

 

2.見たことのある風景と見たことのない風景が広がって

タクシーを降り、回転式のドアをくぐると、そこは冷房でキンキンに冷やされた、大理石の床の大きなロビーとフロント。そして、どこからともなくヨーヨーをしている人が現れたり(というより、タクシーの乗降場ですでに合流する可能性大)、どこか遠くから聞き覚えのあるベアリングの音がしたりと一気に「ヨーヨーの世界」に引きずり込まれます。時間帯にもよりますが、日にち的によっぽど早く着いたりしていない限りは、大会期間中はヨーヨープレイヤーの誰かが必ず1階のフロアに居るのです。もちろん国籍を問わず!これこそが、世界大会の会場であることの最大の証でしょう。目の前に有名な海外プレイヤーがいたりして、英語ができないと「英語勉強しよ」と思ったり。ヨーヨーだけでも交流はできますが、やはり英語で交流をしたいと思う瞬間です。
しかしロビーはまだ見覚えのない風景です。世界大会は一体どこで開催されるんだろうと疑問に思いますが、それは開催日の前日に解決します。ロビーの少し奥へ入ると、今度はさらに広いカーペットの空間があり、壁にはいくつもの白いドアが。そのドアの奥こそ、あの世界大会のビデオでよく見た景色。大きな暗幕とステージが設置された、世界最高峰の舞台が用意されたホールなのです。

そのホールは大会前日の夕方、遅くとも夜には解放され、そこから深夜まで参加登録が一時的に行われます(遠くから事前に来場してきた選手への配慮と思われます)。多くの来場者は、自分の部屋を予約しているにもかかわらず、カーペットの広い空間と会場となるホール、そこが居着く場所となります。
窓の外には、ホテルの写真に掲載されていたプールが広がり、ホテル内にはレストラン、24時間営業の売店、ジムのようなトレーニングルーム、ギフトショップ(……のはず)があります。多くの人はここのレストランかホテルのそばにあるレストランなどで食事をしますが、ほぼ丸1日、洋風の機内食と空港内での食事のみとなると、日本から持ってきた、懐かしい日本食に舌鼓を打つ方も居ます。
ホテルについてからフロアを回っていると、体調を崩してしまっている人が居たり、そうした情報を耳にすることもあります。長旅の疲れや、ホテル内のガンガン効いた冷房、外の灼熱ぶりに体が参ってしまい、毎年必ず誰かは体調を崩してしまいます。テンションが上がりすぎて、無理をしないことも大切ですね。

 

 

 

3.まだ1日目も始まっていないのに

大会開催の前日を迎えたホテル内は、練習がしたくてたまらない人たち、懐かしい友人との対面をする人たち、初めての世界大会でテンションが上がっている人たち、運営の仕事に追われている人たちがちらほらと現れ始めます。当日の朝に会場入りするのではなく、前日もしくは2日ほど前から会場入りする人のほうが圧倒的に多いので、この時にはもうほとんどの参加者が、ローゼンプラザホテル内に居ることになります。
つまり、このあたりから海外の人達とも交流が始まります。トリックを見せ合ったり、一緒にご飯を食べたり、Facebookのアカウントを紹介したりと忙しくなります。設置されたステージの上でイヤホンをつけながら、本番を想定した練習をスタートする方も続々と現れます。1日目に開催される予選はほとんど午後からなので、ここで深夜から朝方まで練習し正午あたりに起きて時間を調整するという手段をとるかたも多いです。アメリカ国外からくるほとんどの選手は、このように時差による体調管理と眠気と常に戦います。ローゼンプラザのホテル内には24時間営業の売店があり、そこに飲料水からジュース、アルコール、レッドブルのような栄養系ドリンクも販売しており、また前述のようにレストランもあるので、選手は常にホテルの中から出ること無く練習が可能です。直前に仕事などでスケジュールに余裕が無かったりして、練習がしたくてたまらなかった人には、まさに最高の環境といえます。ただし、ホール内も冷房が容赦なくガンガンに利いているので、選手観客問わず、長袖の上着を用意しておくのが常識となっています。

ステージにはストリング、メンテナンス用品を持ち込んでおき、予約しておいた部屋には、荷物置きとお風呂と寝るときにしか戻らないという、まるで武者修行のような日々が始まります。本番まであと2日、長くても3日とわずかな期間しか残されていないのですが、練習していないとそもそも落ち着かないという選手も多いので、その不安を振り払うために、一心不乱に練習に取り組みます。劇的にフリースタイルの完成度(動きのキレなど)が上がることもあるので、開催日前と当日では、ガラリと雰囲気が変わっている選手もいます。


大体の選手は、大会のための練習(と休憩)をしっぱなしなので、1日の練習(と休憩)に費やす時間は、多い選手だと16時間を軽く超えます。そうなるとストリングの消費量も普段とは比べ物にならず、3日間練習し続けた結果、100本以上を消費することだってあります。もちろん疲労も重なってくるとケガをする可能性が高まり、また、ケガだけでなくヨーヨーが壊れる可能性もありますので、選手たちは長く与えられた練習時間で調子を崩したりしないよう、細心の注意を払います。

そうして徐々に会場内に緊張感が高まる中、各メーカーから発売される新商品の情報がちらちら流れだしたり、各国の選手のフリースタイルを練習している姿を見れたりと、さらに気持ちが高ぶっていきます。そうこうしている間に一晩過ぎれば、あっという間に翌日。いよいよ世界大会、1日目のスタートです。

【世界大会への質問コーナー】

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それでは本日お答えする質問はおひとつ。こちらです!

Q.今世界大会って何カ国から選手が集まってるんですか?数年前は15カ国だったと思いますが・・・。
.今年は日本、アメリカ、中国、ハンガリー、ロシア、カナダ、イギリス、ブラジル、メキシコ、ドイツ、フランス、ポーランド、スペイン、チェコ、ルクセンブルグ、クエート、フィリピン、シンガポールの18カ国が参加しています(順不同)。

 

また、マカオと香港(中国領土)の方々も参加しています。アジア大会にはこの他にも台湾、韓国、マレーシア、タイ、オーストラリアなど。EYYCにはイギリスなどといった国も参加していますので、すべての国々が集合するとなると、25カ国以上は集まると見られます。

【ついに始まった世界大会 編】

 

1.敗者が生まれ、勝者が救われ

ホール内はステージバナーが掲げられたステージ、各メーカーとショップの物販ブースで大盛り上がりです。事前に告知されていたものから、唐突に発表された新商品まで目白押し。世界大会限定品もここで販売されるので、新しいヨーヨーが目当ての人は、躍起になって売り場を巡ります。

世界チャンピオンが決まるフリースタイル競技は、基本的に1日目は予選、2日目は昼頃に予選・夜に決勝、3日目は決勝のみで行われます。どの日にどの部門の予選・決勝が行われるかは毎年異なりますが、いずれにせよ、1日目の予選を勝ち抜かないと、シード選手以外は後がありません。シード権を手に入れた選手は直接優勝を決する舞台(つまり決勝)に立てますが、そのためには世界大会がシード権を認めた国で優勝するか(日本はもちろんそのシード権を獲得できます)、前年度の世界大会で優勝するしかありません。

なので、当然1日目から予選通過者とそうでない人が生まれます。予選は「たった1分間」のフリースタイルで、一定の点数を超えた人ではなく、点数が高い人から合格となります。そのハードルの高さは、一度でも絡まったり、交換をしてしまったりすれば、よほどの技術がない限り通過は不可能と思ってもらってよいでしょう。当たり前ですが、そのようなミスは通常、許されません。

しかし本番独特の空気は、選手たちを緊張で蝕みます。手足がガタガタと震えだし、まともに水も飲めない、酷ければ呼吸もできなくなる程に緊張します。普段からミリ単位のストリングとヨーヨーの操作をしているのに、このような状態になっては、ミスをしないという方が不思議なもの。それでも失敗せず、無事1分間のフリースタイルを突破した人だけが、決勝の舞台へと立つことができます。

満を持してここまで来たのに、予選落ちとなってしまった選手の反応はさまざまです。泣き崩れる選手、呆然とする選手。いずれにせよ、とてつもないショックです。しかし最終的には、決勝へ出場する選手のサポートをしたり、選手であるプレッシャーから解放されて、目一杯世界大会を楽しんだりと、ポジティブになることがほとんど。ヨーヨーが好きなら誰でも楽しめるという、世界大会の魔力ならではです。

さて、普通は一度予選を突破すれば、あとは決勝の舞台に臨むのみとなります。しかし1部門だけ例外があり、それはなんともっとも競技人口の多い1A部門なのです。実は1A部門のみ「予選→予選第2ラウンド→決勝」と進行し、予選を勝ち抜いた後、もう一度その突破したメンバー同士で予選が行われます。その予選の中には全国チャンピオン・世界チャンピオン級の選手もごろごろと居るので、最終的に倍率は一気に跳ね上がり、1A部門に出場する選手は、1日目を勝ち抜いても、気が気でない2日目を迎えることとなります。

2.実はフリースタイルだけではありません

世界大会はなにもフリースタイル競技だけではありません(ただし世界チャンピオンという称号を得られるのは1A~5A、AP部門の優勝者のみです)。日本で開催されるJYYFの公式大会と同じようなラダー部門もあり、モッズ(ヨーヨー改造)部門もあり、またスピントップやディアボロのフリースタイル、ラダー競技も開催されています。

大会だけでなく、ヨーヨーのはじめ方、2A、3A、4A、5Aのやり方などのワークショップも開催されています。ヨーヨーに興味があって、これからスタートしたいという方にうってつけですね。マニアックですが、モッズについての情報交換がされている場所もあります。

ほかにも、1日目の夜には会場近くの世界一のヨーヨーコレクター、Lucky Meisenheimer宅によって開催される「Lucky’s BBQ」や、深夜に開催される「Wheel of Penalty」。これらは英語を介さずとも、ヨーヨーでコミュニケーションをとれるイベントの象徴的存在です。Lucky’s BBQは皆でバーベキューをしながらヨーヨーで遊んだり、Lucky氏のコレクションを見たり(家自体が大きなヨーヨー博物館になっているんですね)。Wheel of Penaltyはルーレットに書かれたペナルティを背負いながらヨーヨーをしっちゃかめっちゃか遊ぶというもの。ここではあえて詳しくは語らないでおきましょう。詳しく知りたい方はこちらへ。

このように、世界大会はヨーヨーが好きな人なら余すとこなく満喫できるイベントとなっています。大会初日ともなっていれば、海外の選手と仲良くなっていたり、行動の幅も広がっていることでしょう。気の早い人は「あと2日で終わっちゃうのかぁ」と考えてしまうはず。のんびりな人は「まだ2日もある」と考えてしまうはずです。

余談ですが、現地のソースだけでは物足りないということで、バーベキューに某黄金のタレを持参していた方が居たりもしました。

3.でも本番はこれからなの

1日目のスケジュールが終わったホール内は、ガラリと静まり返ります。朝から夕方までのあの賑やかさが嘘のよう。中にいるのは、明日か明後日に本番を控えた選手たち。人が空いてる時を見計らい、睡眠時間の調整を兼ね、練習に取り組む人々が数人居るのみです。
ホール内には給水器が設置されており、冷房も効いていて、さらにステージの上でのびのびと本番を想定して練習できる貴重な機会です。団体や大きな機材を用いての出場が多いAP部門のリハーサルも、この時行われることが多いようです。スポーツタオルや汗ふきシート、制汗スプレーがあれば便利で、ホールを出てすぐのところには24時間の売店もあるので、夜食もカバーできます。本番のその時間が訪れない限り、選手たちの武者修行期間はまだまだ続きます。最後の最後までヨーヨーを振り続けるか、気持ちを落ち着けるために休養するか。どちらが吉と出るか凶と出るかは、今の段階では神のみぞ知るといったところでしょう。

ちなみに、日本人が手とストリングのスベリを良くするために頻繁に使われている『制汗スプレー』というものは、あまりほかの国では普及していないので、よく「これ何?使ってみていい?」と声を掛けられます。手を洗ってから使うとより使い心地が良くなる、と教えてあげられると親切ですね。

ここまでくれば、直前の練習量より、これまでどれだけ練習してきて、自信に繋がっているか。それこそが重要になってきます。電話やインターネットを介して自国にいる友人に連絡を取ったりする方も居ます。インターネットはフロントに連絡し、料金を払うことで利用可能となります。確か1日10ドルほどだったかと……。

翌日のスケジュール2日目は、昼頃は予選、夜はいよいよ世界チャンピオンが誕生する決勝がスタートします。開催される半分の部門の世界チャンピオンが決し、新たな歴史となる瞬間。その時、来場者は皆「本当の世界大会」を味わうこととなります。

【世界大会への質問コーナー】

リワインドのツイッター公式アカウントにて募集している、世界大会に関する質問をお答えするコーナーです。世界大会期間中(8月2日~10日あたりまで)は随時受け付けておりますので、どしどしご連絡ください!ダイレクトメッセージ、ツイートへのリプライ(返信)、どちらでも構いません。
それでは本日お答えする質問はおふたつ。こちらです!

Q.世界大会は予選からJASRAC曲使えるのですか?
A.公序良俗に反していない限り、使用音楽に制限はありません。

また、JASRACはあくまで日本の音楽著作権管理協会なので、アメリカで開催される大会には影響はありません(おそらく)。
歌詞に「Fuck」などの差別的な意味が強い言葉が含まれる曲は失格となります。使用可能な曲かどうかは、事前にジャッジに確認を取ることが可能です。

Q.世界大会に必要な費用はおおよそいくらですか?(旅費、滞在費、食費の合計)
A.飛行機やタクシーといった交通費で20万円、ホテルなどの滞在費で3万~5万円(滞在日数で前後・2人以上でのルームシェアの場合)、食費で2~3万円とあれば十分かと思います。

あくまで大まかな数字なので、参考までにどうぞ。

【そして世界チャンピオンが誕生する 編】

 

1.世界一熾烈な戦い「1A部門予選ラウンド2」

決勝の舞台に上がるには、必ず「予選」を勝ち上がらなけれなければいけません。しかし、ある大会の、特定の部門では例外です。それは「世界大会の1A部門」。このコーナーのその3でお伝えしたように、1A部門は決勝の舞台に上がるために、予選と準決勝(予選ラウンド2)を勝ち上がらなければいけません。その準決勝は、世界チャンピオンクラス、全国チャンピオンクラスの選手が入り乱れ、もっとも波乱の起きやすい、世界一熾烈な戦いとなります。

ただでさえ予選で精神をすり減らされているところに、追い打ちをかけるように行われる準決勝は、予選の時に調子の良かった選手であっても、ここでミスが多ければ容赦なく落とされます。一度勝ち上がってからの敗北は非常にダメージが大きい選手も多く、しばらく立ち上がれなくなってしまうことも。

そんな熾烈な戦いの中、日本人の活躍は目覚しいものがあります。昨年も今年も、準決勝から決勝に進出した日本人は6割以上を占めており、ヨーヨー大国を思わせる成績ぶりです。世界大会はあくまで個人戦なので、各国から出場したプレイヤー数はとくに関係なのですが、それでも嬉しくなってしまいますね。

 

 

 

2.緊張感の高まる会場

基本的に夕方は予定が無く、2日目は昼の予選が終わると、ホール内は一時閑散とします。ある人は昼食に、ある人は買い出しに、ある人は練習に、ある人は仮眠に。いずれにせよ、この日に本番を迎える人にとっては、まるで地獄にでも送られるような気持ちの方もいれば、緊張を通り越して逆に冷静になっている場合だってあります。あまりにも緊張が高まって手が震えてくると、フリースタイル中、ヨーヨーを投げた瞬間に、そのトリックが失敗するかどうかがわかるようになるとかなんとか。

青ざめた顔、止まらない冷や汗。それを止めるのは、観客の暖かい視線と歓声、そして練習しかありません。

ステージに上がった瞬間、緊張がふと楽になるという選手がいますが、きっとそういったことが起因しているのかと思われます。

決勝の開始時刻が近くなると、閑散としていたホール内が、だんだんと騒がしくなってきます。今年は誰が勝つのか、負けるのか。いよいよ本番だ、ヨーヨーのセッティングは大丈夫か。カメラは万全か、ジャッジは集まっているか。誰もが心落ち着かない時間。予選の時とは別の異様な熱気が、場内を包みます。選手たちはその雰囲気に気圧されないよう、必死に踏ん張らなければ行けません。踏ん張らなければ、足が震えて、ステージの上でへたり込んでしまいそうなほどに、そのプレッシャーは強烈なのですから。

 

 

 

3.世界チャンピオンが誕生

決勝の舞台を迎えた世界大会は、予選の時とは全く違う表情をしています。ステージの前に一杯に詰まった観客の数、物々しい空気、選手たちの表情、カメラの数、照明の点き方。まるでこれまで戦ってきた大会とは違う大会にいるような感覚にすらなってしまうことも。「これが本当の世界大会なのか」初めて世界大会に来た人の中には、このような感想を抱く人も少なくないかと思います。

ステージは毎年どの部門でも、波乱の連続です。というより(当たり前ですが)、波乱無しで進むことはほとんどありません。観客は一部のプレイヤーについては練習風景を見ていたりするので、フリースタイルは例え知らない選手でも、祈るような気持ちで見ることになります。そうした中でステージの上で選手たちが死力を尽くし、完璧なフリースタイルをこなしたならば、思わず叫び、手を叩き、立ち上がりたくなることでしょう。

選手たちが安心し報われるのは、本来はトロフィーをもらう瞬間のみですが、それでも満足できるフリースタイルの出来となったとき、観客からの拍手と大きな歓声を浴びられることは、「全てはこの瞬間のために」と思わせてくれるほどに、それまでの人生の中でも一番に幸せな瞬間に違いありません。
どれだけ万全を期しても、思わぬところで絡まってしまったり、大きな失敗をしてしまい、悔し涙を飲む選手ももちろんいます。その後、来年に向けてもう一度立ち上がる気力が湧くか湧かないか。それは各々の選手次第。ヨーヨーを一生続けていこうと思っていた人たちにとって、これからヨーヨーとどう付き合っていくか、どうヨーヨーを続けていくか。もっとも考えさせられる時間となるのではないでしょうか。

熾烈な戦いを終えた大会2日目、開催部門のおおよそ半数の、世界チャンピオンが誕生します。それが初めて優勝を成し遂げた選手か、連覇を成し遂げた選手か、返り咲いた選手かはもちろん、毎年各部門異なります。しかし誰にでも言えることが、その日までにヨーヨーに対して、その部門に対して、もっとも一途になっていた選手が勝利を収めることができるということです。

世界チャンピオンというタイトルを手にした選手の人生がどう変わるかは、当然その選手自身の手に委ねられます。そもそも、チャンピオンタイトルを使うか否か。どのように使うか、なぜ使わないか。それは優勝者にのみ許された贅沢な悩み、嬉しい悲鳴です。

世界チャンピオンが誕生する瞬間は、見守っていた観客としてもとても気持ち良く、ましてやそれが自分のよく知る選手や、友人であればなおさら「来てよかった!」そう自信を持って言える瞬間となります。たった3分間に詰められた思い、気迫、努力の全てが報われるその瞬間を見ていたほとんどの方は、その時、ヨーヨーがますます好きになっていることでしょう。

 

【終わる世界大会 編】

 

1.全てを終えた人、これから始まる人

ラダー部門、Lucky’s BBQ、Wheel of Penalty、そして世界チャンピオンを決めるフリースタイル部門のいくつかを終え、いよいよ世界大会は3日目……最終日を迎えます。フリースタイル目的で世界大会に来たわけではない人でも、この日ばかりは全員集合です。

出場選手でも、2日目に決勝を終えている選手たちは、3日目は(多部門出場でもない限り)観戦と応援を残すのみとなります。観客は最後まで目一杯楽しむのみ。

一番出場者の多い1A部門は、ほぼ必ず最終日に開催されるようです。
最終日に決勝を迎えた選手たちの緊張はピークに達します。呼吸もやっとになってしまうほど息が詰まるか、逆に緊張を通りすぎて冷静になっているかのどちらかでしょう。予選を勝ち抜いた選手に、あと一回だけ、何事もなく無事にフリースタイルができるよう、応援は声援を送るのみ。すでにステージでの演技を終えた選手たちは、ステージに立っている人の気持ちがわかるからこそ、熱がこもります。

ほとんどの日本人は、どれだけ国内で有名であろうと、世界大会ではアウェイなことが多いです。世界大会のホームはやはりアメリカですので、有名なアメリカの選手たちほどの声援を始めから受けることは、日本人はほとんどありません。逆を言えば、声援の大きい選手は、それだけ世界的に露出度の多く、注目されている選手ということになります。
露出度は自分のプロモーションビデオを制作できる環境、ヨーヨーの経験年数が大きく関わってきますので、(なかでも)まだ競技ヨーヨーにふれて日の浅い選手の場合、どうしても声援はまばらとなってしまい、それがさらに緊張を加速させます。そんな中の熱い声援というのは本当に心強く、時には緊張・プレッシャーを完全に跳ね除けてしまうほどの力を持ちます。そういった声援一つでフリースタイルの出来が変わることは大いにあるので、世界大会だけでなく、観戦という立場で大会に居る方は、ステージの選手に対して、余力のある限り、大きな声援を送ってください。

 

 

 

2.最後の世界チャンピオンが決まる

2日目には3~4部門決勝が、3日目には2~3部門の決勝が行われます。言うまでもなく、3日目はこの年の世界大会、最後の世界チャンピオンが誕生します。

ジャッジは体力のキープを努め(実はジャッジというのは恐ろしく疲れるお仕事なんです)、選手は本番直前まで心して待機、観客は2日目と同じように誰が優勝かを予想したり、エールを送ったり。一見2日目と同じ様相です。しかしそこには「もうすぐ終わってしまうのか」という、どこか淋しげな雰囲気も。この日の決勝の表彰式が行われると、世界大会のスケジュールは、完全に終了となります。目まぐるしく、永遠にも思えた夢のような日々が、いよいよ終わりを告げようとしています。

本番のプレッシャーにならないよう、自分の番まで他の人のフリースタイルを見ないという方もいるため、この日まで自室にこもって練習していた選手が、この3日目に初めて来場者にちゃんと姿を見せるなんてこともあります。そうして、最後の一分一秒まで自分の出来る限りを注ぎ込む、最後の自分との戦いが始まります。

 

世界チャンピオンが決まる瞬間は、会場内が大きな歓声と拍手で埋め尽くされます。信じられないという表情の選手、当然さと自身に満ちあふれた表情の選手、嬉しさが極まり泣き崩れる選手。新たに世界チャンプとなった人たちの気持ちや反応はさまざまに。
こうして、世界大会は人それぞれの終わりを告げます。

 

 

 

3.「これから」

世界大会が終わり、その日の深夜のうちに、ホール内は完全撤収となります。しかし諦めの悪い人たちは居るもので、ホールの外では延々と朝方まで、ヨーヨー好き達による集会(?)が行われます。あの人のフリースタイルが良かったと議論を交わす人、おめでとうと栄光を讃える人、最高のステージだったと讃えあう選手、反省会をする面々。大人たちの中には、お酒を持ち寄る方も。いずれにせよ、会場が閉まったくらいでは、まだまだ熱は冷めやらぬといったところでしょう。

この夜から帰国までは、一部の人にとっては、長く、じっくりと考えさせられる時間となります。自分が世界で何番目にヨーヨーがうまいと格付けされたわけで、自らが想定していた結果と全く違う順位だったりすると、よりヨーヨーをやる気に火をつけるきっかけとなったり、逆にヨーヨーを辞めてしまうきっかけになったりします。悲しいことですが、敗戦のショックで、ヨーヨーから離れてしまうプレイヤーもいます。また、優勝して、そのまま燃え尽きてしまうこともあります。やはりヨーヨーをスポーツとして取り組んでいる人である以上、このようなことが起きるのは避けられないようです。

しかし世界大会に行ったことは大きな経験値となり、必ずヨーヨープレイヤーの上達の大きな力となります。それを決して忘れてはいけません。

今回1A部門優勝となったマーカス・コウ選手と、今年のアジア大会で「シンヤは今リワインドで働いてるのかい?」→「うんそうだよ」→「ヨーヨーだけが仕事かい?それともヨーヨー以外が仕事かい?」→「ヨーヨーだけが仕事だよ」という話をしました。世界チャンピオンとなった彼は今ごろ、将来はヨーヨーを一生やっていくのか、一般職に就くのか、いっそヨーヨーを仕事にするのかなど、いろいろと考えをふくらませているのかもしれないですね。

気持ちを一度折られてからが勝負。世界大会は、とくにそう強く思わせられる大会です。ヨーヨーメーカーにとって、ヨーヨーショップにとって、ヨーヨープレイヤーにとって、なによりヨーヨー好きにとって、とても大切な一年の節目。それが世界大会の姿です。

近年はUstreamでの生中継もあり、たとえ現地に訪れていない人にとっても、一年の節目となるほどの力を持っています。回線も十分な太さとなり、ほぼリアルタイムでフリースタイルを見ることができ、結果を知ることが可能となりました。しかし、やはり「ヨーヨーが好きなら行ったほうがいい」です。世界大会ほどヨーヨー好きにとって楽しく、興奮するイベントはないのですから。

 

 

 

 

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(質問がなかったため、世界大会のQ&Aはお休みです)

 

 

さて、長々と書いて参りましたが……。

おそらくこれで、私からの世界大会についての更新は終了します。

 

今年の世界大会も大いに盛り上がり、いつか絶対行きたいと思った人も居るのではないでしょうか。先ほども書きましたが、この「世界大会ってこんな感じです」をお読みいただいて、世界大会に行きたくなったという方、ますますヨーヨーが好きになったという方が生まれたということであれば、とても嬉しく思います。

 

ヨーヨーの世界は今日、一年節目を迎え、ここから新しい一年が始まります。今回の世界大会で思うように行かなかった選手も、そうでなかった選手も、もう一度!この一年!ヨーヨーを思いっきり楽しめましたら幸いです。

そして優勝された方々、本当におめでとうございます!!

リワインドも、選手たちの努力を見習わねばと奮い立たせられた3日間でした。

 

また機会がありましたら、このストアブログで、もしくは店頭にてお会いできますよう。

 

「世界大会ってこんな感じです!のコーナー」

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

 

スタッフ 城戸

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